インスタント マリッジ～取り急ぎ結婚ということで～

尚史とのデートに着ていく服を買いに来たなんてことは、張り切っていると思われたら恥ずかしいので、さすがに言えない。

もし何の用だったのかと聞かれたらどう返事をしようか。

『ふーん……。もし遅れそうなら連絡して』

私の心配をよそに、尚史は特に詮索することもなく『じゃあまたあとで』と言って電話を切った。

ホッとして電話を切ると同時に、ゆっくりと店のシャッターが開き始める。

もう少しまともな服を……とは思ったけど、どんな服を買えばいいだろう？

今日は八坂さんとのデートに着ていく勝負服を尚史と一緒に買いに行く予定なのに、尚史とのデート用の服まで買うことになるなんて、かなり痛い出費だ。

いっそのこと、これから買う服を八坂さんとのデートにも着て行こうかと思ったけれど、私のセンスで勝負服を選ぶことには不安がある。

とりあえず尚史とのデートには、あまり気取らずに普段も着られるお手頃価格の服を選ぶことにしようか。

いや、それでは尚史に対してあまりにも失礼だから、少しくらいは可愛げのある服を選ぶべき？

そんなことを考えながらレディースファッションのショップが並ぶフロアを目指す。