インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史には悪いけど、やっぱりいつもの店に行って地味で無難な服を買おう。

肩を落としながらスカートを元の場所に戻そうとすると、背後から誰かが大きな手を伸ばして、私の持っていたスカートの掛かっているハンガーを掴んだ。

ビックリして振り返ると、なぜかすぐ真後ろには尚史がいた。

「いつもの服装と全然違うけど、こんなのも似合いそうだな」

「えっ……?なんで尚史が……」

「ん?モモ探知機だから、俺」

「探知機って……」

ここに来ていることも、服を買おうとしていることも尚史には一言も話していなかったのに、どうして尚史がここにいるんだろう?

もしや本当に私の体内にGPSでも仕込んであるのか?

「それより服選んでるんだろ?目ぼしいのはあった?」

「ああ、うん……それがなかなか……。どれも可愛すぎて、私には似合わない気がする」

「そうかなぁ……。俺はこれなんかすごくいいと思うけど。試着してみれば?」

そう言って尚史はマスタード色のスカートと、マネキンが着ているものと同じトップスを私に差し出す。

私に似合うとは思えないけれど、せっかく勧めてくれているのに断りづらいから、試着だけしてみることにした。

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