インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
実際に着て見せれば、私には似合わないということが尚史にもわかるだろう。

「……尚史がそう言うなら」

服を持って試着室に入り、鏡の前に立つ。

鏡に写った自分の姿を改めて見ると、本当に冴えない格好だ。

いや……『格好が』と言うよりは、冴えないのは私自身が女としてイマイチだからだろう。

尚史は特別おしゃれをしているわけでも、服装に気を遣っている様子でもないのに、何を着ていても見映えがして人の目を引く。

小さい頃から一緒にいるのが当たり前すぎてあまり気にしたことがなかったけれど、尚史と会うためだけにこんなに服装で悩んだのは初めてだ。

尚史が選んでくれた服に着替えて、鏡の前でクルリと一周回ってみた。

スカートの裾がフワリと翻るのを見て、私にはやっぱり可愛すぎやしないかとか、この姿を見た尚史はなんと言うだろうかと考えてしまい、恥ずかしいような、照れくさいような、なんとも言えない気持ちになる。

「モモ、どんな感じ?試着できた?」

「うん……試着はできた……けど……」

「じゃあ開けるよ?」

えっ、いきなり開けるの?!

まだ心の準備もできてないのに?

私が「ちょっと待って」と言おうとしたときにはすでに、尚史は試着室のカーテンを開けていた。

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