インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
鏡の前で尚史に背を向けうつむいている状態の私を見ても、尚史は何も言わない。
無言はつらいよ、頼むからなんか言って!
黙って憐れみの目を向けられたり、気を遣って白々しいお世辞を言われるよりは、『やっぱり似合わないな』と笑い飛ばされる方がまだマシだ。
「はは……こんな可愛い服、私にはやっぱ似合わないよねぇ」
私が沈黙に耐えかねてそう言うと、尚史は私の両肩をつかんでクルリと私を自分の方に向かせた。
「思った通りだな」
「うん、思った通りだね」
「似合ってる」
「そう、似合ってる……え?」
今のは聞き違いなのか?
『似合ってる』って言ったような……。
もしかして適当にそう言ったのかなとか、やっぱりお世辞なのかなと思ったけれど、尚史は視線を私の頭のてっぺんから爪先まで3往復させて、大きくうなずいた。
どうやら本当に似合うと思っているらしい。
「いいじゃん、似合うよ。勝負服、それにしとけば?」
「あ……うん……そうする……」
尚史は私が八坂さんとのデートに着ていく勝負服を選んでいるのだと思っているようだ。
……違うんだけどな。
だけど尚史本人に面と向かって『私が服を買おうと思ったのは、尚史と一緒に歩くためだよ』とは言いづらい。
無言はつらいよ、頼むからなんか言って!
黙って憐れみの目を向けられたり、気を遣って白々しいお世辞を言われるよりは、『やっぱり似合わないな』と笑い飛ばされる方がまだマシだ。
「はは……こんな可愛い服、私にはやっぱ似合わないよねぇ」
私が沈黙に耐えかねてそう言うと、尚史は私の両肩をつかんでクルリと私を自分の方に向かせた。
「思った通りだな」
「うん、思った通りだね」
「似合ってる」
「そう、似合ってる……え?」
今のは聞き違いなのか?
『似合ってる』って言ったような……。
もしかして適当にそう言ったのかなとか、やっぱりお世辞なのかなと思ったけれど、尚史は視線を私の頭のてっぺんから爪先まで3往復させて、大きくうなずいた。
どうやら本当に似合うと思っているらしい。
「いいじゃん、似合うよ。勝負服、それにしとけば?」
「あ……うん……そうする……」
尚史は私が八坂さんとのデートに着ていく勝負服を選んでいるのだと思っているようだ。
……違うんだけどな。
だけど尚史本人に面と向かって『私が服を買おうと思ったのは、尚史と一緒に歩くためだよ』とは言いづらい。