インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
こんなときこそお手本に習おうとターゲットのカップルの方を見ると、若い二人は窓の外を見ながら体を寄せ合って密着していた。

カップルの彼氏は彼女の肩を抱き、彼女は彼氏の肩にもたれ掛かるようにして、笑みを浮かべながら彼氏の顔を見上げている。

「あれもやってみる?」

「えっ」

尚史が私の肩に手を回して軽く抱き寄せた。

私の体は尚史の長い腕の中にすっぽりと収まり、背の高い尚史の胸に押し付けられた私の耳に、尚史の鼓動が伝わってくる。

「やっぱモモはちっちゃいなぁ」

そう言って尚史は抱き寄せている方の手で私の頭を撫でた。

誰、このイケメン……?

なんで当たり前みたいな顔をしてこんなことができるの?!

なんかこれ……ターゲットのカップルよりも密着していやしませんか……?

ってか……手を繋ぐよりもハイレベルなことをしているんじゃ……?

「モモ、顔上げられる?」

いやいやいや、無理無理無理、絶対無理!!

私、今絶対顔真っ赤だし、心臓めちゃくちゃバクバク言ってるし、ついでに脇汗も手汗もひどいし、こんな状態で尚史の顔なんかまともに見られないし!

身体中の血が頭に昇って、もう鼻血出そう……!

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