インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史がどんなに協力してくれても、肝心の私が頑張らないとこの作戦の目的を果たすことはできないんだから、私自身がもっと慣れる努力をしなくちゃいけない。

私は光子おばあちゃんに花嫁姿を見せるために、1日も早く結婚するんだ。

そのためには男の人に急に触れられても、過剰に防衛したり攻撃したりしないようにならなくてはいけない。

自分にそういい聞かせ、なんとか心を落ち着かせて顔を上げると、尚史が心配そうな顔をしていた。

「ごめん、ちょっと無理させ過ぎた」

「尚史は悪くないよ。私こそごめんね、いきなりだったからビックリしただけで、ホントに大丈夫だから……その……」

私はおそるおそる手を伸ばし、尚史の指先をそっと握った。

尚史は驚いた顔をして私を見ている。

「できればまずは、手を繋ぐところからでお願いします……」

「……モモがそう言うなら」

指先をほんの少し握っているだけなのに、自分からそうしたことが照れくさくて、大人になった分だけ恥ずかしくて、鼓動がどんどん早くなる。

尚史もやっぱり照れくさいのか、さっきから窓の外の景色ばかり見ている。

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