インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
背の高い尚史の長い手足でホールドされて自由を奪われた私は、なんとかこの体勢から逃れようと子どもみたいに手足をバタバタさせた。

「離せぇーっ!」

「モモももう少し一緒に寝よう」

「はぁっ?!寝ないし!なに寝ぼけたこと言ってんの?とにかく起きて!」

「10分だけー……」

なんてことだ!

尚史は私を思いきり抱きしめたまま二度寝を決め込んでいる。

こんな状況でよく寝られるな!

どうにかして尚史の腕の中から抜け出そうともがいてみたり、無理やり起こそうとしたけれど、尚史は一向に起きる気配がない。

……ダメだこりゃ、何をやっても無駄みたい。

私はとうとう観念して抵抗するのをやめ、少しの間だけこのまま尚史を眠らせておくことにした。

なんだかんだ言っても昨日尚史がそばにいてくれて心強かったし、看病してくれたことには感謝しているから、お礼と言ってはなんだけど今だけは尚史のわがままを聞いておこう。

「もう……しょうがないな、尚史は……。ホントに10分だけだからね……」

こんな風に抱きしめられているのはドキドキして落ち着かないけれど、尚史の体温がなんとなく心地よくなってきて、私までうっかり眠ってしまいそうになった。

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