インスタント マリッジ～取り急ぎ結婚ということで～
この雑誌は好きな男の人をおとすためのマニュアルなのか？

とてもじゃないけど私にはこんな大胆で開けっ広げに性を語る雑誌を手に取る勇気はない。

私には難易度が高すぎると思ったけれど……。

性体験はおろか恋愛の経験もなく男女のことには無知なのに、結婚を目論んでいる私こそがこの雑誌を熟読する必要があるのでは？

だがしかし、この過激な見出しの雑誌を買うと、あからさまに体で男性をおとそうとしているのだと店員や周りの客に思われそうで恥ずかしい。

だけどまったく興味がないわけでもない。

買うべきか買わざるべきかと悩んでいると、隣に立った女性が難なくその雑誌を手に取った。

一体どんな人がこの卑猥な雑誌を読むのかと思ってチラッと横を見ると、その人も同じように私の方を見た。

「あっ、夏目先輩、お疲れ様ですー！」

「ああ……谷口さん。お疲れ様です」

谷口さんは恥ずかしがったり気まずそうにする様子もなく、手に持っていた雑誌の一番上に例の雑誌を乗せた。

たまたま居合わせたこちらの方がなんとなく気まずい。

しかも私が今手に持っている新刊は誰もが知っているようなメジャーな作品ではなく、カバーイラストからもBLだとバレバレだから腐女子と勘違いされそうだし、もちろんヲタバレだけは避けたいので同僚の谷口さんには見られたくない。

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