インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
私は大事な新刊をさりげなく隠そうと雑誌に手を伸ばす。

「夏目先輩、合コンのとき八坂さんといい感じでしたよね。その後どうです?」

「えっ、ああ……」

なんの前触れもなく八坂さんの話題を振られたことにうろたえ、よく確認もせずにすぐ手元にあった雑誌を手に取る。

だけどそれがよりによって例の過激な見出しの雑誌だったので、さらにうろたえて派手に落としてしまった。

「あ、夏目先輩もこれ買うんですね。もしかしてこれで八坂さんを虜にしちゃうつもりですか?」

「かっ……買わないよ?間違えて取っちゃっただけだから!それに八坂さんとはまだそういう深い仲では……」

しどろもどろになりながら必死で言い訳をして、落としてしまった雑誌を元の場所に戻し、隣にある普通のファッション誌を手に取った。

谷口さんは意味ありげにニヤニヤ笑っている。

「そんなに照れなくても普通に買えばいいのにー……。でも『まだ』ってことは、これからそうなる可能性があるんですね!いいなぁ……」

……ん?いいなぁってどういう意味?

もしかして谷口さんもじつは八坂さんを狙っていて、私に恋のライバル宣言をしようとしている?

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