インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「モモからのお礼はもらえそうにないな」

尚史はとても小さな声でそう呟いて、少し寂しそうに笑った。

なぜ尚史がこのタイミングでそんなことを言ったのか、私にはまったくわからない。

私が尚史の欲しがっているお礼がなんなのか突き止めることを忘れているのがバレたのか?

「えっ、なんで?ここに尚史が欲しいものがあるなら持っていっていいよ?」

「いや……いいよ、別に。それだとあんまり意味ないから」

尚史はそう言って私の頬にいつもより長く頬を押しあて、優しく頬擦りをした。

そして少し名残惜しそうに私から手を離す。

「じゃ、今度こそ帰るわ。おやすみ」

「おやすみ……」

尚史が帰ったあと、お風呂に浸かりながら尚史の言った言葉を思い出して、いろんなことを考えた。

相手を見極めろとか、悪い男に気を付けろとか、酔い潰れて一夜の過ちをおかすなとか、そういった類いのことを心配していたのはよくわかる。

それにしても私が推理して正解しないといけないお礼ってなんなんだろう?

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