インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
結婚しても歳を取っても、尚史とは幼馴染みであることには変わりはないけれど、今までみたいに一緒にいられなくなるなんて想像もつかない。

それくらい私と尚史は離れることなく一緒にいたのだ。

「どうだろう……。そうなってみないとわからないな……」

「結婚したら家庭が優先になって、同性の幼馴染みだってなかなか会えなくなったりするの。結婚って、義務とか責任とか、いろいろ背負うものができるからね。だからモモちゃん、どんな事情があっても一番大事にしないといけない人だけは間違えちゃダメだよ」

そう言って佐和ちゃんは私から手を離し、オフィスの中へ入っていった。

既婚者の佐和ちゃんが語ると説得力がある。

あんなに自分の考えを相手に強く伝えようとする佐和ちゃんは初めて見た。

私は結婚後のことなんか何も考えないで、ただ光子おばあちゃんを喜ばせたい一心で、相手もいないのに、とにかく早く結婚しようと思っている。

いまさらだけど『結婚って、結婚式を挙げたら終わりじゃないんだよ』と釘を刺されたような気がした。





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