インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
こんな尚史を私は知らない。

突然の出来事に戸惑い頭が真っ白になって、体が小刻みに震えだす。

このまま体ごと意識が遠くへ飛ばされてしまいそうで、震える手で尚史の背中にしがみついた。

尚史はゆっくり唇を離して、私の頭をワシャワシャと撫でた。

「よくできました」

「よ……『よくできました』じゃないよ、バカッ!なんなの、急に?!私初めてだったのに!」

「だからだよ」

なんだそれ?

『だから』の意味がまったくわからないんだが?

私のファーストキスをたったの3文字で片付けるとは何事だ!

私が納得いくまできっちり説明して欲しい。

「モモはこれから八坂さんと付き合うんだろ?キスくらいでいちいちビビってたら、結婚なんか一生できないと思うぞ」

「キスくらいでって……」

「いいかモモ、よく聞け。男なんて下心の塊みたいなもんだ。好きな子が相手ならなおさらだけど、たいして好きじゃなかろうが他に女がいようが、その気にさえなればキスもセックスもできるし、そのためなら平気で嘘つくヤツだっている。だから男をあんまり信用しすぎるな」

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