インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史の言うことは本当のことかも知れない。

きっと尚史は、世間知らずで恋愛経験がなくて男の人の心理がわからない私を心配して言ってくれたんだと思う。

だけどその言葉はこれまで二人の間にあった信頼関係を全否定されたような気がして、それが尚史の口から出てきたことがひどくショックで悲しかった。

「……そんなこと言ったら、尚史だって男でしょ?」

「だからだよ」

またそれか!

だからその『だから』の意味がわからないんだってば!

「さっきからそればっかり……意味わかんない」

「だから……好きでもない男の前で無防備に目なんか閉じるなってことだよ」

「目を閉じろって言ったのは尚史なのに……」

少し唇をとがらせて文句を言うと、尚史は小さな子どもを見るような目で私を見て、私の頭をポンポンと軽く叩いた。

「そういうとこな。モモはなんとも思ってないんだろうけど、俺だって男なんだから」

どういう意味だ?

それは尚史も信用しちゃいけないってことか?

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