インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
いつか尚史にとって私より谷口さんの方が大事な存在になったら、私のことなんかまったく気にも留めないようになるのかなと思うと無性に寂しくなった。

私はこれまで尚史がそばにいるのが当たり前だと思っていたから、急に離れられるのはやっぱりつらいと思う。

ずっと変わらず一緒にいられないのなら、その心積もりはしておかなければいけない。

「もしさ……尚史に彼女ができたら、ちゃんと教えてね」

私がそう言うと、尚史はコーラを飲むのをやめて眉間にシワを寄せた。

「んん?なんだいきなり?」

「うん……。八坂さんとのことで、やっぱり私には恋愛は無理かもって思ったんだけど……尚史はそんなことないでしょ?昔は気付かなかったけど、もし彼女ができても私がくっついてると、きっと彼女にイヤな思いさせちゃうから」

これまでこんなことを真面目に話したことはなかったから妙だと思っているのか、尚史はポカンとしている。

だけど思うところはあるらしく、宙を見上げて少し首をかしげて何か考えているようだった。

「そうさなぁ……。覚えとくわ」

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