インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
伯母さんの話によると、光子おばあちゃんは認知症の症状が出始めてから、小さな子どものようになるときがあるそうだ。

おやつの時間を心待ちにしている姿は、まるで小さな女の子のようだと伯母さんは言っていた。

「そうか。じゃあ俺、お見舞いにあれ持って行こう」

「あれって?」

「金平糖だよ。おばあちゃん、好きだったよな。いっつもポケットに入れてて、自分が食べるときに俺たちにもくれたじゃん」

尚史が光子おばあちゃんと過ごしたのはずっと昔のことなのに、ちゃんと覚えてくれていたことがとても嬉しかった。

大人になった尚史を見ても誰だかわからない可能性は高いし、昔私の家でよく一緒に遊んでいた幼馴染みの尚史だと言っても、思い出せないかも知れない。

それでもきっと光子おばあちゃんは喜んでくれると思う。

「うん、そうだったね。喜ぶと思うよ。じゃあ私は手鞠飴にしようかな。あれもよく一緒に食べたよね」

「じゃあ明日、病院に行く前に田沢屋(タザワヤ)に寄ろう。そうだ、あんこ玉も好きだったよな。あれも買って行くか」

「そうだね、そうしよう」

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