インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
さっきまでいつか尚史と離れる日が来ると思うと寂しかったけど、明日は光子おばあちゃんに会えるんだと思うと少し元気が出てきた。

あんなことがあったあとなのに、私が今こうして笑っていられるのは、きっと尚史のおかげだと思う。

こんな風に尚史と一緒にいられる日がいつまで続くかはわからないけど、その日まではこの時間を大切にしたい。

「モモ、さっきの話だけど……マジであきらめんの?」

家のすぐそばまで来たとき、尚史はまた結婚の話を蒸し返した。

やめておけと言っていたのは尚史なのに、私があきらめると言ったら今度は本当にあきらめるのかと確かめるのはどうしてなのか。

尚史は私に結婚して欲しいのか、して欲しくないのか、どっちなんだ?

「尚史、まな板の上の鯉の気持ちってわかる?」

「んんー?まな板に乗ったこともないし、さすがに鯉の気持ちはわからんなぁ……。モモはわかるのか?」

「これから私を食ってやろうと思ってる相手に押さえ付けられて逃げられないんだよ。やだって言っても離してもらえなくて、めっちゃくちゃ怖いの。私ももう少しで鱗全部剥がれて食われるところだった。もう好きでもない人に触られるのも、あんな怖い思いするのもやだ」

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