インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「モモ、起きられるか?薬もらってきた」

「うん……ありがとう……」

尚史の手を借りてなんとか起き上がった。

この間みたいに抱き起こしてはくれないんだな。

そんなことを考えながら薬を受け取り、水と一緒に薬を飲み込んだ。

「今日はもう休んだ方が良さそうだな」

「そうする……」

「じゃあ俺はそろそろ帰るわ」

「……うん」

この間は私が眠っていても朝までずっとそばにいてくれたのに、今日の尚史はあっさりと帰っていった。

尚史は『元の尚史』に戻っただけなのに、冷たくされているようでなんだか寂しい。

そっか、あのときは目一杯彼氏ぶってただけで、幼馴染みの私たちの関係はこれが当たり前だったんだ。

それに気付くと同時に、尚史が谷口さんと楽しそうに笑っている顔を思い出した。

胸がモヤッとした原因はおそらくこれだ。

尚史は谷口さんと付き合い始めたけれど、昨日はきっと怖い思いをした私を慰めるために、仮想カップルのときのように甘やかしてくれたんだと思う。

谷口さんと付き合っているのに、どうして私と結婚するなんて言い出したんだろう?

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