インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「で……話戻すけど、俺は谷口さんとも他の誰とも付き合ってないし、モモと結婚してもなんの問題もない」

「でも尚史は誰かと付き合うとか結婚とかめんどくさいって、ずっと言ってたもん」

「それはマジでめんどくさい」

光子おばあちゃんと私を気遣ってくれる気持ちは嬉しいけど、結婚なんてマジでめんどくさいと思っている尚史を、私のわがままに付き合わせるわけにはいかない。

結婚するふりだけならまだしも、今だけの気まぐれな思い付きで、この先ずっと尚史を私に縛り付けておくのは心苦しい。

今ならまだ『あれは冗談でした!』で済ませられるだろうか?

もしいつか尚史に誰か好きな人ができたら私はただの足枷にしかならないし、私よりも他の人を想う尚史なんか見たくない。

もしかしたらそんな日が来るかもと思ったら、ギュッとわしづかみにされたように胸が痛くなって、また涙が込み上げてきた。

「バカ……だったらなんで私と結婚するとか言うのよ……」

私が涙ぐみながら呟くと、尚史は少し笑って私の頬を指先で軽くつまんだ。

「モモが恋愛とか結婚なんてめんどくさいって言うから俺もそう言ってたし、他の子とはマジでめんどくさいけど、モモとだったらめんどくさいとは思ってない」

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