インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「……それってもしかして、私とだったら『はじめまして』から始める手間が省けるから?」

私が尋ねると、尚史は私の頬を思いきりつまんで盛大にため息をついた。

私は尚史の手を振り払ってジンジン痛む頬をさする。

「ちょっ……なんなの?!痛いんだけど!」

尚史は眉間にシワを寄せて私をにらみつけ、私の頭を両手でガッシリとつかんで額をぶつける。

「いたっ!さっきからなんなのよ、もう!」

「この間の頭突きの仕返しだ!いいか、よく聞けバカモモ。俺は好きでもない女とは手ぇ繋いだりしないし、デートもキスも結婚も、好きな女としかしない」

「……はい?いや、私と散々手ぇ繋いでデートしたし、抱きしめたりくっついたり、おまけにキスまでしたよね?あなた、私になんの断りもなく私の大事なファーストキスを奪いましたよね?」

私が食ってかかると、尚史は私から両手を離し、苛立った様子で頭をグシャグシャとかき乱した。

「ああもう!なんでわかんねぇかな?言うよ、言いますよ!言えばいいんだろ!」

えっ、なんで逆ギレ?

どうしてそんなにイライラしているのかはわからないけれど、尚史は私に何か隠していたことがあるらしい。

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