インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「でも俺は誰でもいいってわけじゃなくて……モモがいいんだ、好きだから」

尚史は私をしっかりと抱きしめながら、いつになく甘い声でそう言って、私の頭を優しく撫でた。

尚史の大きな体にまるごとすっぽりと包まれて、ドキドキするのにホッとしている私がいる。

私はいつの間にか尚史に抱きしめられることに慣れていて、緊張とは違う胸の高鳴りを感じるようになっている。

尚史とこういう関係になるの、悪くない……かも。

「なぁモモ。俺にこうされるの、イヤか?」

「ううん……イヤじゃない」

「他の男に同じことされたらどうだ?」

昔付き合っていた人にいきなり押し倒されたとき、キヨの店でナンパされたときや駅で酔っ払いに絡まれたとき、そして八坂さんに肩を抱かれたり押し倒されて体を触られたときは、ただ怖くて気持ち悪くて、とてつもない不快感と嫌悪感に襲われた。

思い出すだけで身震いがする。

「……ちょっと触られただけで怖くて気持ち悪くて、めちゃくちゃイヤだった」

「それって、モモはもう俺じゃなきゃダメってことだろ?だから観念して俺のこと好きになれ。そしたら俺が一生モモを守ってやる」

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