インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
こんなに過保護に甘やかされることにすっかり慣れてしまった私は、尚史以上に他の誰かを好きになることなんてできないんじゃないかと思う。

その『好き』が家族同然のものなのか、それとも恋愛感情なのか、今はまだよくわからないけれど、私が他の誰よりもずっと一緒にいたいと思えるほど尚史を好きなことには違いない。

「……うん、そうだね。じゃあそうする」

私が素直にうなずくと、尚史はいつものように私の頭をワシャワシャ撫でた。

私は仔犬か幼児か?

それでもこの大きな手で撫でられると安心するんだから、私は尚史にすっかり飼い慣らされてしまっているようだ。

「よし、そうしろ。言っとくけど、やっぱやめるとか離婚するとか、絶対なしだからな?」

「そっちこそ」

私が笑いながらそう言うと、尚史は仮想カップルをしていたときのおやすみと言う前のように、私の頬を両手で包み込んで、まっすぐに私の目を見つめた。

「大事なことだからもう一度言う。俺はモモが好きだ。だからずっと一緒にいるよ。約束する」

尚史のその言葉はストンと私の中に落ちてきた。

胸の奥がジンとしびれて、あたたかいもので満たされる。

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