インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
谷口さんは何も言わないけれど、私がいきなり尚史と結婚したことをどう思っているだろう?

『私が中森さんを好きだってわかってて、二人の関係を隠してるなんてひどい!』なんて言って泣かれたらどうしよう。

「夏目先輩……あ、そうか、もう夏目先輩じゃないんだ。中森先輩でしたね」

「うん……。でも呼びやすいように呼んでくれたらいいよ、名前の方でもいいし」

「では今日からモモ先輩と呼び方を改めます。ところでモモ先輩はピンクとオレンジ、どちらが好きですか?」

いきなりなんの話?

とりあえず泣かれたりキレられたりしなくてホッとしたけど、私の好きな色を聞いてどうするつもりなんだろう?

「えーっと……ピンクかな……」

「ピンクですね、わかりました!ありがとうございます!」

谷口さんはそう言ったかと思うと、鞄を持ってオフィスを飛び出していった。

いやいや、私はまったくわけがわからないんだけど?

一体なんだったんだろうと思っていると、ポケットの中でスマホの通知音が鳴った。

【お疲れ。一緒に晩飯食いに行く?】

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