インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史の気持ちがまっすぐ私に向いていることが、心から嬉しいと思った。

尚史は私を好きだと言ってくれていたのに、勝手に嫉妬して怒ってしまった自分が情けない。

恥ずかしいけれど、私ももっと素直に気持ちを伝えようと決心して口を開く。

「……私も……好き、だよ」

「それは幼馴染みとして?」

「またそういう意地悪なこと言うんだ……。もういい、尚史なんか知らない」

「ごめんって……。ずっと聞きたかったから嬉しくて、つい調子に乗った」

やっぱり私たちは、告白のシーンすらロマンチックにはならないようだ。

それが私たちらしいと言えば私たちらしいのかも知れない。

「ただでは許さん」

「えーっ……どうしたら許してくれる?何が欲しい?漫画の全巻セット?漫喫の回数券?」

「なんにもいらないけど……ずっと私だけの尚史でいてくれたら、それだけでいい」

私がそう言うと、尚史は私の方に手を伸ばし、優しく抱きしめて頭を撫でた。

尚史にこうされるとやっぱりドキドキするけれど、以前よりももっと尚史の体温が心地よくて、尚史にすっぽりと包み込まれていることに安心する。

そして尚史がこんな風に優しく抱きしめるのは私だけだということがとても嬉しいし、もっとこうしていて欲しいと思う。

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