インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
私たちは互いの体を抱きしめ合って、何度も唇を重ねた。

他のことは何も考えられなくなって、心の中は尚史でいっぱいになっていく。

唇が離れたあとも、恥ずかしくて照れくさくて、尚史の顔をまともに見ることができない。

尚史はうつむいて顔を真っ赤にしている私を包み込むように抱きしめる。

「モモ、可愛い。他の男の前でそんな顔するなよ」

「しないよ……」

「これから目一杯可愛がるから、もっと可愛い顔、俺だけに見せて」

尚史は私の耳元で、今まで聞いたことのないような甘い声で囁く。

見事に胸を撃ち抜かれた。

漫画でよくある『ハートをズキュン!』の描写そのものだ。

ヤバイ、胸がキュンキュンして鼻血出そう……。

イケメン夫の甘い声と甘い言葉の破壊力、ハンパない……。

「やだもう……萌え死ぬ……」

「気をしっかり持て。キスだけで死なれてたまるか。あ、そうだ。俺、今日ここに泊まっていい?」

「えっ、なんで?!」

「俺らもう結婚したんだし、夫婦なんだから一緒に寝ても良くね?泊まっていいか久美子さんに聞いて来ようっと」

私が止める間もなく、尚史は鼻唄でも歌い出しそうな勢いで1階に下りて行った。

< 386 / 732 >

この作品をシェア

pagetop