インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「尚史、起きて」

捕獲されたまま声をかけると、尚史はふにゃっと笑って私の頬に頬をすり寄せた。

「モモ……」

もう騙されないぞ、どうせまたモモンガでしょ?

「モモ、可愛い……好きだよ……」

騙された……!

今度は私だった……!

寝ているときまでイケメンか!

またにやけそうになる口元を引き締めて、もう一度声をかけた。

「尚史、起きて。今日は光子おばあちゃんのお見舞いに行くんでしょ?」

「んー……」

尚史はゆっくりまぶたを開いて私を見ると、またふにゃっと笑って、唇に軽くキスをした。

またしても私は不意打ちのキスにうろたえ、心臓をバクバクさせている。

一緒に暮らし始めたら毎日こんな感じだとすると、私の心臓は何年もつだろうかと心配になってきた。

「おはよ……モモ」

「お、お、おはよう……」

「朝起きたら目の前にモモがいる……。俺、今めっちゃ幸せ……」

夫になった尚史は朝からとんでもなく激甘だ。

こんな甘い言葉、聞いているこちらの方が恥ずかしい。

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