インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
乙女のピンチにヒーローが駆け付けるのは漫画だけではないらしい
その日の仕事が終わり、いつものように『シューティングスター』でお酒でも飲みながらゲームの続きをしようと思って尚史にメッセージを送ると、【今日は残業で少し遅くなる。終わったら行く】と返信があった。

尚史が遅くなっても仲間の誰かは来るだろうし、レベル上げでもして待っていようと思いながら一人で店に足を運ぶ。

私が店に着いてドアを開けたとき客はまだ誰もおらず、キヨがカウンターの中でグラスを磨いていた。

「いらっしゃい、モモっち。あれ、今日は一人?尚史は?」

確かにこの店には仕事終わりで一緒に来ることが多いけど、キヨは私と尚史がニコイチとでも思っているんだろうか。

別行動のときだって普通にあるっていうのに。

「残業終わってから来るって」

「ふーん、そうなんだ。で、何飲む?」

「ビールにしようかな。あと、お腹空いたからごはん食べたい」

「了解」

キヨはサーバーからグラスにビールを注いで、おつまみのポテトチップスと一緒に私に手渡したあと、キッチンで料理を作り始めた。

刻んでいる材料を見たところ、キヨはオムライスを作ろうとしているらしい。

キヨの作るオムライスは私の大好物だ。

私はキヨの絶品オムライスを心待ちにして、バッグからゲーム機を取り出し、ポテチをつまみにビールを飲みながらゲームを始める。

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