インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
なんだこの気まずさは……。

恥ずかしいだけじゃなく、なんとなくいけないことをしていたような気持ちになる。

洋子ママ、ごめんなさい。

あなたの息子をたぶらかしたのは私です……。

でも尚史もそれを望んでいたからそういう流れになったわけだし、私たちは公的にも認められた正真正銘の夫婦なんだから、間違ったことはしていないよね?

いや……まだ夫婦として自立もしていないのに、親のいる実家でそんなことをしている時点で間違いなのか?

おませな中高生カップルじゃあるまいし、大人なんだから親のいる家では控えようよ……。

そんなことを考えながら、尚史に背を向け布団に隠れてゴソゴソと着替えていると、着替え終わった尚史がすぐそばにやって来て、背後から頭をポンと軽く叩いた。

「俺、先に下りてるわ。モモも着替え済んだら下りて来て」

「わかった」

私が振り向きもせずに着替えながら返事をすると、尚史は私の前にヒョコッと顔を出して、ニヤッと笑ったかと思うと、唇に軽くキスをした。

「いいとこで親に邪魔されんのはイヤだから、続きは引っ越して二人きりになってからな。次は絶対に最後まで残さず食うから、覚悟してろよ」

「……バカ」

私はこんなにドキドキしているのに、尚史はすっかりいつもの調子で、新居に引っ越したら私を残さず食うと宣言して部屋を出ていった。

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