インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
一人になると、さっきまで尚史に愛でられていたことをまた鮮明に思い出してしまい、さらに鼓動が速くなって身体中が熱くなる。

尚史はなんの取り柄もない私を可愛いと言って、愛しそうに私の素肌に触れた。

その手はいつもより熱くて、とても優しかった。

もしあのとき、洋子ママがドアをノックしなかったら、私は尚史を受け入れていたかも知れない。

心のどこかでは、尚史とならそうなってもいいと、私は思っていた。

未遂に終わったけれど、私はきっと、身も心も尚史のものになりたいと思ったんだと思う。

そんなことをシラフで考えるには、あまりにも恥ずかしすぎる。

私はかぶっていた布団を脱ぎ捨て、必死になって熱くなった頬を両手で扇いだ。

幼馴染みだったときは二人きりになってもなんともなかったのに、結婚してから……いや、仮想カップルを始めてからは、尚史が別人みたいに色気を放ってくるから、どうしようもないくらいドキドキソワソワしてしまう。

尚史を好きだと自覚してからはなおさらだ。

尚史に見つめられるとドキドキして、触れられると身体中が熱くなって、さらにドキドキして……。

私、尚史と一緒に暮らして身がもつのかな……?

とりあえず今日は最後まで食い尽くされることは回避できたけど、尚史は『引っ越して二人きりになったら』と言っていたし、それまでに心の準備だけはしておいた方が良さそうだ。


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