インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
世間には大人っぽい美人なんて腐るほどいるし、見た目も中身もなんの取り柄もないヲタクの私なんて、いつかそのうち飽きられて捨てられるんじゃないか。

そんな最悪の事態を思い浮かべながら黙ったまま歩いていると、尚史がためいきをついた。

「そんなにイヤならいい」

「えっ?」

「俺はずっとモモが好きだったから結婚できてマジで嬉しいし、そこらじゅうの人に誰彼かまわず自慢したいくらいだって思ってるけど……モモは強引に俺の嫁にされたから、嬉しいとかそういう気持ちはないんだよな。ごめんな、調子に乗って」

尚史は悲しそうな顔をして自信なさげな声でそう言うと、踵を返して元来た道を足早に戻り始めた。

「尚史、なんで戻るの?」

「新居探すの、やっぱやめとくか。モモは俺と一緒に暮らしたいなんて、ホントは思ってないだろ?」

ええぇ?!

私、ちゃんと『尚史が好き』って言ったよね?

尚史と一緒に暮らしたくないなんて、これっぽっちも思ってないんですけど?!

ご近所さんに見られると恥ずかしいから『近所で手を繋ぐのは恥ずかしい』と言っただけなのに、なんでそこまで飛躍したの?

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