インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
ああもう、なんでこんなに可愛い顔をするんだ!

こんなところじゃ、ギューもチューもできないじゃないか!

私は尚史を抱きしめたい衝動でフルフルと震える手をなんとか抑え込む。

今ここで抱きしめるのは無理だけど、せめて手くらいは握りたい。

「尚史があんな風に考えてたとはまったく思ってなかったから、ちょっとショックだったけど……私が素直じゃないせいで、尚史を不安にさせちゃうのかなって。だから……」

さっきは恥ずかしいと言って拒んでしまったけれど、今度は私から手を繋いで、いつものように指を絡めた。

尚史は目をパチパチさせて、繋いだ手と私の顔を交互に見た。

「ご近所さんに見られたら、恥ずかしいんじゃないの?」

「もういいの。ホントは私も尚史と手を繋ぎたいから。尚史、早く新居探しに行こう」

「……うん、行こうか」

しっかり手を繋いで再び駅の方に向かって歩き出して間もなく、昔からよく知っている近所の田口さんに出会った。

いきなりご近所さんに遭遇だ。

こうなったらもう開き直るしかない!

冷やかし上等、かかってこい!

私たちは新婚ホヤホヤ、親のいる実家で日曜の朝からイチャイチャしてしまうほどのラブラブバカップルだ!

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