インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「こんにちは」

私がいつも通りに笑って挨拶をすると、田口のオバチャンは私たちを見て「ふふふ」と笑った。

「あら!尚史くんにモモちゃん、こんにちは。久しぶりね。結婚したんですって?おめでとう」

「はい、ありがとうございます」

「二人は昔からずっと仲良しだったから、いつになったら結婚するんだろうって、みんな言ってたのよ」

なんと、私の知らないところでそんな噂をされていたのか!

おそらく近所の人たちは、私たちが付き合っていると思っていたんだろう。

『じつは交際0日で結婚したんですよ!』なんてことを正直に言うと、結婚に至った経緯を根掘り葉掘り聞かれそうだから、絶対に言わないけれど。

「長い付き合いだし、両親も私たちの結婚を待ちかねてたんで、そろそろかなって」

「そうね、お母さんたちすごく喜んでたわ」

なんとなくそうじゃないかとは思っていたけど、浮かれた母と洋子ママがご近所さんに、私たちが結婚したことを言い回っていたんだな。

そりゃ光の速さで近所じゅうに広まるわけだ。

私たちが結婚について自ら話さなくても勝手に広まるんだし、ここは当たり障りのないことを言って、早々に切り上げよう。

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