インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「確かに便利そうだけど、そこは一番狭いのに一番家賃が高かったね」

車の中で、内見させてもらった物件の資料を見ながら相談していると、車を運転していた不動産屋のスタッフの本木(もとき)さんが、信号待ちの間にもう1枚資料を私たちに差し出した。

「もう一件行ってみますか?お二人が提示された条件とは少し違うかと思って店ではお出ししなかったんですけど、さっき出掛けにやっぱり気になったんで持ってきたんです」

尚史は差し出された資料を受け取り、私にも見せてくれた。

私たちが提示した『駅から徒歩5分、築5年以内』ではなく『駅から徒歩10分、築15年』だけど、間取りは希望の2LDKでリビングがとても広く、家賃は希望の金額より少し安い。

近所にはスーパーや公園、コンビニもあるらしい。

これはかなり便利そうだ。

「じゃあ一応そちらもお願いできますか?」

「はい、では早速参りましょう」

車の窓から外の景色を見ていると、私たちの家にだんだん近付いていることに気が付いた。

資料の住所をよく見てみると、家からそんなに離れていない場所だ。

「尚史……ここ、家のすぐ近くだよ。もしかして古本のすぐそばじゃない?」

「うん、俺もそう思った」

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