インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「たぶんいないと思うけど、一応聞いてみる。キヨの店の常連さんにも、エレクトーン弾ける知り合いはいないかってダメ元で聞いてみたら?」

「そうだな。もし誰かいたら、お願いして来てもらってお礼すればいいか。プロに頼むって手もあるし、そういう事務所みたいなのがないか、あとで調べとく」

それからしばらくして必要な家具や家電、雑貨などの相談が一段落すると、尚史は缶に残っていたビールを飲み干して、カーペットの上にゴロリと寝転がり大きく伸びをした。

「昨日今日といろいろ忙しかったな」

「これからまだまだ忙しくなるけどね」

「モモ、疲れただろ?」

「少しね」

本来なら何か月もかけて準備するところを、ほんの数週間で済ませてしまおうとしているのだから、疲れるのも無理はない。

だけどこの修羅場のような忙しさを乗り越えた先には、尚史と二人きりの新婚生活が待っているのだと思うと、なんとか頑張れそうな気がする。

「モモ」

ビールを飲みきってテーブルの上に缶を置くと、尚史が私を呼んだ。

「ん?」

まだ何か相談し忘れたことがあったかなと思いながら振り返ると、尚史は私に向かって両腕を伸ばし優しく微笑んだ。

< 462 / 732 >

この作品をシェア

pagetop