インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「そっか……。幼馴染みから急に夫婦になって、最初は私も戸惑ってたからね。でも今はちゃんと相思相愛だから安心して」

後輩を相手にのろけるなんて恥ずかしいし照れくさいけれど、谷口さんはとても嬉しそうに笑った。

「それ聞いてホッとしました!結婚式楽しみにしてます!」

「うん、エレクトーンよろしくね」

ついこの間までは恋敵なのかもと思っていた谷口さんと、こんな話をするようになるとは思いもしなかったけれど、谷口さんの本音を聞けたことで心に引っ掛かるものがなくなって、とても清々しい気持ちになった。


すっかり夜も更けたキヨの店からの帰り道、私と尚史は人通りもなく静まり返っている住宅街を、手を繋いでゆっくり歩いた。

引っ越しが済むまではそれぞれの家に帰る。

今夜はもう遅いし明日も仕事だから、玄関先でおやすみと言って別れることになるだろう。

もっと一緒にいたいな。

家までの道のりがもう少し長ければいいのに。

「ずいぶん楽しそうだったけど、谷口さんと何話してた?」

私と谷口さんがわざわざ離れた席に移動したから、尚史は何を話しているのかがずっと気になっていたようだ。

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