インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
ほんの少しの酔いのせいなのか、それとも尚史の私への熱い想いをみんなから聞かされて気持ちが昂っているからなのか、私は今、無性に尚史に触れたい。

なんならこのまま家に連れ帰ってしまいたいくらいだ。

私が『もっと一緒にいたいから今夜はうちに泊まって』と言えば、尚史はきっとそのお願いを聞いてくれるだろう。

だけど一緒に床につけばおそらくお互いに触れ合いたくなるだろうし、それが原因で明日の仕事に支障をきたしたらと思うと、社会人としてのなけなしのプライドがその一言を食い止める。

「はい、どうぞ」

私がコーラを差し出すと、尚史はまだ少しふてくされた顔のままそれを受け取った。

きっと私の知らなかった自分の言動をみんなにいろいろと暴露されて、相当恥ずかしいんだろう。

「まだ怒ってる?」

「怒ってる」

本当はそんなに怒っていないことはわかっているけれど、その横顔があまりにも可愛かったので、尚史のすねたふりに付き合うことにした。

私は尚史の手を握り、しかめっ面を覗き込むようにして見上げる。

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