インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「ねぇ、そろそろ許してよ」

「イヤだ、絶対許さん」

「どうして?」

「だってさ……モモは俺のことなんかなんとも思ってなかったのに、昔からずっと俺ばっかりがモモのこと好きで……なんか悔しいじゃん」

尚史は照れくさそうに目をそらしながらそう言って、また私から顔をそむけコーラを飲んだ。

私のことをこんなに想ってくれる人は、世界中どこを探しても尚史しかいないと思う。

そして私がずっと一緒にいたいと思えるほど好きなのも、一緒にいて安心できるのも、抱きしめたいとか触れて欲しいと思うのも、尚史ただ一人だ。

「尚史、こっち向いてよ」

「イヤだ」

私は握っていた手を離し、そっぽを向いてすねる尚史のネクタイをつかんで思いきり引っ張った。

不意を突かれて驚いた尚史の上半身が私の方に傾いた瞬間、私は尚史の顔を両手でつかまえて、唇にすばやくキスをした。

尚史は私の不意打ちのキスによほど驚いたのか、ポカンとして言葉も出ないようだ。

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