インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「それは無理だね。それに尚史とはちっちゃい頃から一緒にいるから、付き合うとか恋人とかいう感じじゃないよ」

「兄弟みたいな?」

「うーん……兄弟でもないな。でも家族に近い感じ」

「家族ねぇ……」

家族と同じくらいに気を許せることもあるし、親子でも兄弟でもないから必要以上に踏み込まない。

私と尚史の間にはそんなほどよい距離感があり、それに伴う安心感もあると思う。

だからこそ尚史との関係はこのまま変わらないのが理想的だし、尚史も私とどうこうなりたいとは思っていないだろう。

「尚史のことはともかく、今は八坂さんとうまくいくにはどうすればいいのかを相談したいんだけど」

「ああ、そうだった。でも俺はその人のことを知らないから、アドバイスするのは難しいんだよな」

「キヨの思う一般的な男性の目線で答えてくれたらいいよ。デートのときは女の子にこんな風にしてもらうと嬉しいとか、逆にイヤな印象を受けることとか、女の子のこんなところがかわいいと思うとか、好きな服装とか。あと……初めてのデートでどれくらい攻めるつもりでいるのかが気になる」

私がいろいろ言ったからか、キヨは「うーん」と唸りながら腕組みをして首をひねった。

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