インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
リビングの真ん中で火曜日に買ってきた生活用品を広げていた尚史が、私がリビングに入ってきたことに気付いて振り返った。

「モモ、おかえり」

『おかえり』という言葉がやけにくすぐったい。

そうか、これからは尚史と私は毎日この部屋に帰るんだ。

「ただいま。差し入れにドーナツ買ってきたよ」

私が隣に座ってドーナツの入った袋を差し出すと、尚史は腕を伸ばして、ドーナツではなく私の体を抱き寄せて唇に軽くキスをした。

「……いきなり?」

「ドーナツもいいけど、まずはただいまのキスだろ」

「まるで新婚さんみたいなんだけど」

「まるでじゃなくて、正真正銘の新婚だからな」

このイケメン夫はどこまで甘いんだ?

きっとドーナツよりも甘いに違いない。

「お茶でもって思ったけど、よく考えたらポットもやかんも買ってないね」

「あー……忘れてたな。じゃあ電気ケトルでも買うか。たぶん買い忘れてるものがいろいろあると思うから、メモしといて明日にでも買いに行こう」

「わかった。じゃあ私、何か飲み物買ってくるよ」

「いや、俺が行ってくる。モモはゆっくりでいいから、この辺のもの適当にしまっといて」

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