インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「尚史は私のこと可愛いっていつも言ってくれるけどね。残念ながら尚史は子どもの頃からずっと、そのブスのことが好きなんだって」

これくらいじゃ甘いな。

もう一声いっとくか。

「大人なんだから、過去に他の人と体の関係があっても別に不思議じゃないし、そんなのどうでもいい。今の尚史が私だけを好きでいてくれて、この先私以外の人とそういう関係にならなければそれでいいと私は思ってる。だけどせっかくみんなが開いてくれたお祝いの席を台無しにしたことと、尚史が私に隠しておきたかったことを私の前で勝手に暴露したことは許せない。そろそろお引き取りください。空気くらい読めるでしょ?」

私が水野さんを連れて出るように目で促すと、兄者はビクッと肩を跳ね上げ、水野さんの肩に手を添えた。

「水野、相当酔ってるな?もう帰ろう、駅まで送るから」

「全然酔ってないけど」

「いや、ベロベロに酔ってるから!参ったな、水野は絡み上戸かー!とりあえずここ出よう」

兄者は引きずるようにして水野さんを店から連れ出した。

店の中はシンと静まり返っている。

あの女め、この気まずい空気をどうせいっちゅうんじゃ。

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