インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
両親だって確実に歳を取るわけだし、自分たちの老後の資金にしても良さそうなのに、こんなに甘えてしまって本当にいいんだろうか?

「私たちは助かるけど……こんな大金、ホントにいいの?」

「お父さんから二人への御祝儀よ、気前いいわね。無駄遣いしないで、大事なことのために使いなさいね」

私が父の方を見ると、父は満面の笑みを浮かべてうなずいた。

「お父さん、ありがとう」

「最初のうちはいろいろ大変だろうけど、これからは二人で支え合って頑張りなさい。すぐ近くなんだから、いつでも尚史と一緒に御飯でも食べに帰っておいで」


予想していたよりあたたかく両親に送り出され、すぐ近くだからいつでも会えるのに、少し涙腺がゆるんだ。

すぐ近くでこれなんだから、嫁ぎ先が滅多に合えないような遠方だったら号泣していたかも知れない。

この先もずっと両親の娘であることに変わりはないけれど、私はこれから尚史と新しい家庭を作るんだ。

過去がどうとか、尚史が誰と何があったなんて、つまらないことを気にしている場合じゃない。

尚史と二人で前を見て進まなくちゃ。



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