インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「平気って言うか……あの状況だよ?めちゃくちゃ怖くてパニクってたから、助けられた安心感の方が勝ったみたいな。尚史が助けてくれなかったら、私は今頃どうなってたか……」

「なるほど。尚史、ヒロインのピンチに駆け付けたヒーローみたいだったもんな。俺が女なら間違いなく惚れるね」

世の女性たちはあれで惚れるのか?

俗に言う『吊り橋効果』的なやつ?

そりゃまぁさっきは私だって、なんの躊躇もなく助けてくれた尚史を少し見直したと言うか、普段とは違う一面に驚きはしたけれど、私と尚史は恋愛の対象とかそういう関係ではないから、お互い相手に対してそんな甘い感情を持ち合わせていない。

だからキヨが期待しているような、少女漫画的展開にはならないのだ。

キヨは自分の言った言葉がよほど面白かったのか、無言でチャーハンを掻き込む尚史の、かっこいいヒーローとはかけ離れた姿を見て笑っている。

「私にとっては笑いごとじゃないんだけど……。まぁ、少女漫画ならあのタイミングはバッチリだね」

「だろ?あ、そうだ。俺、いいこと思いついた。モモっちさぁ、例の……八坂だっけ?その男とのデートに備えて、尚史に慣らしてもらえば?」

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