インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
そうすれば尚史も不安にはならないだろうし、私自身も尚史への愛情がさらに増して幸せな気持ちになった。

尚史はとても幸せそうに笑っている。

「今までは私が一方的に怒ってたことはあっても、喧嘩したのは初めてだったよね」

「喧嘩も初めてだったからどうしようかと思ったけど……それ以前にモモに『二度と触らないで』って言われたときは、完全に嫌われたと思って目の前が真っ暗になった。犬でも飼って子どもの代わりに可愛がって、寂しさを癒すことになるのかなとか……あわよくば犬がきっかけでまたモモと仲良くなれるかなとか……」

もしかして尚史は、私が勢いに任せて放った一言を一生忠実に守る気だったのか?

そこは犬を飼うより、なんとか二人で解決する努力をすべきだと私は思うのだけど。

いつでも私を気遣ってくれるのは嬉しいし、尚史は私に弱いのだということはよくわかったけれど、夫婦はもっと対等な関係でいるべきだ。

「犬に仲を取り持たせるつもりだったの?」

「まぁ……そうなればいいなって。でも『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』って言うから、夫婦喧嘩食わせるのはやっぱ無理か」

「うーん……よく考えたら『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』って言葉、ヘンだよね」

「ヘン?どの辺が?」

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