インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「そもそも夫婦喧嘩は食べ物じゃないのに、なんで犬に食わせようとしたんだろう?それになんで犬なの?猫とか牛とか他の動物は食べようとしたけど、犬が食べようとしなかったからそんな風に言うようになったのかな?」

尚史は少し呆れた顔をして枕元に置いていたスマホを手に取り、ネットで『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』を検索して、その画面を私に見せた。

「物の例えだな。実際に食わせようとしたわけではないらしい」


【夫婦喧嘩は犬も食わないの解説】
何でも食う犬でさえ見向きもしないという意から、夫婦間の細かい内情などは知りがたいものだし、すぐに元に戻るようなことなのだから、ほうっておけばよいということのたとえ。


「なるほど……。でも最近の犬はなんでもかんでも食べないらしいし、夫婦円満にひと役買う家族みたいな存在だって話、よく聞かない?この犬はきっと飼い犬じゃなくて、夫婦喧嘩以外はなんでも食べる野良犬だったんだね」

「モモの着眼点はそこか?これは要するに、『他人が口をはさまなくても、夫婦喧嘩なんてそのうちおさまるからほっときゃいい』ってことだろ?」

「それでおさまればの話だけどね。夫婦喧嘩も末期になると、話し合うのも離婚するのも面倒になってお互いに自分の中から相手の存在を消すんだって」

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