インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
私の何気ない一言に、尚史は顔をひきつらせた。

まさかさっきの些細な喧嘩で、いつか自分たちもそうなるのかと思ったのか?

だからそこはそうならないように努力しようよ。

私は尚史のひきつった口元を指でつついて無理やり口角をあげた。

「私たちはそんな風にならないように、喧嘩してもちゃんと話し合って、お互いが納得して仲直りしよう。そのためにはやっぱり、これだけは約束して欲しいんだけど」

「もしかして……『浮気は絶対にしない』ってこと?」

あのとき尚史はやっぱり気付いてたんだな。

そりゃそうか。

新婚夫婦のルールが『うちの中でも歩きスマホは禁止!』なんて、どう考えてもおかしいもんね。

「そう。私と結婚する前のことは、本当にもう気にしなくていいから。このさき一生、よそ見しないで私のことだけ好きでいて。他の人には絶対に触ったり触らせたりしないで。私も尚史のことだけずっと好きでいるし、尚史にしか触らないし触らせないから」

「もちろん最初からそのつもり。俺はずっと昔から好きなのはモモだけだし、目の前に本物のモモがいるんだから身代わりなんて要らないし。触ってもいいなら妄想じゃなくて本物のモモを抱きたい」

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