インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「もちろん尚史じゃなくて八坂って男と一緒にいるとイメージしてだな、世間の若い男女がするデートとか恋愛の予行演習的なことをするわけだよ」

それってつまり、恋人といるときを想像して振る舞う私の姿を尚史に見せるってこと?

めちゃくちゃ恥ずかしくないか?

そんなの深夜特有の妙なテンションで、好きな人に書いたラブレターとか妙にセンタメンタルな気分に浸って綴ったポエムを、翌朝家族に見られるのと同じレベルの恥ずかしさだと思う。

朝になって改めて読み返すと、自分が書いたとは思えないような背中がむず痒くなる言葉が羅列されているアレをだ。

いや、私には3次元でそこまで好きになった人なんていないから、実際は大好きな漫画のヒーローへの熱い想いを綴ったものだったけど、恥ずかしいことには変わりない。

尚史だって私のそんな乙女チックな姿なんて見たくもないだろうし、なんの得もないのに練習台みたいな役はしたくないに決まっている。

とは言え、キヨが私を思って提案してくれたのだから、私の口からハッキリ「イヤだ」とは言いづらい。

なんの関係もない尚史を巻き込むことも申し訳ないから、ここはひとつ、尚史にきっぱり断ってもらおう。

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