インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
でもまぁ……それも悪くない。

素肌が触れ合う心地よさとか、抱き合ってお互いのぬくもりを感じると安心するのは、私にもわかる。

ずっと私を想い続けてくれた尚史のささやかな夢を叶えられるのは私しかいないし、私も尚史とならそうしていたいと思う。

「うん……じゃあ、そうしようかな」

裸のまま抱きしめられて広い胸に頬をすり寄せると、尚史はまた幸せそうに笑って私の額にキスをした。

「あー……幸せ……。モモ可愛い……。ずっと夢だったことが現実になると、『死んでもいい』なんて思わないんだな。俺、今『モモと一緒にめちゃくちゃ長生きしたい』って思ってる」

私だと思い込んで初めて水野さんを抱いたあと、『死んでもいい』と思ったと尚史は言っていた。

尚史はきっとそのときのことを思い出したんだと思う。

身代わりでも妄想でもなく、生身の実体の私と結ばれて、『できるだけ長く二人で一緒にいたい』という欲が出てきたんだろう。

「結婚したところなのに『死んでもいい』なんて言われたらイヤだよ、私も尚史とずっと一緒にいたいもん」

「うん。じいさんばあさんになっても、ずっと一緒にいような」

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