インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「いやいやいや……そんなことしても意味があるとは思えないし……第一、そんな面倒なこと尚史はイヤだよね?」

こう言って促せば当然うなずくだろうと思ったのに、大盛りのチャーハンをきれいに平らげた尚史は何を血迷ったのか、相変わらずの無気力な顔をして軽く首を横に振った。

「……別にいいけど」

尚史の返事に耳を疑った私は、尚史の顔を穴が空くほど見つめながら思いきり首をかしげた。

「我の聞き違いか……?おぬし、今なんと申した?」

「“別にいいけど”と申した」

「……はぁっ?!」

いいのかよ!

なんでそこで断らない?!

だいたいこんなめんどくさいこと、あんたが一番嫌がることでしょうが!

「ちょっと待って。尚史、本気で言ってる?」

「本気で言ってる。さっきの様子だと八坂さんとのデートの日に、モモがまた新たな武勇伝作りかねないから。八坂さんの股間は俺が守る」

なんだその理由は?

尚史は私の乙女の貞操より、八坂さんの股間の方が大事ってことか!

言いたいことはいろいろあるけれど、前科がある私は返す言葉がない。

「尚史が協力してくれるってさ。良かったじゃん、モモっち。尚史、先に言っとくけど、モモっちが嫌がることとか一線を超えるようなことはするなよ。あくまでも『仮想カップル』だからな」

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