インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
恋愛はRPGの如し?まずは経験値を積むべし
キヨの店からの帰り道、私と尚史は無言で電車の座席に並んで座っていた。

なりゆきとは言え、尚史とカップルの真似事をすることになろうとは思ってもみなかった。

それはきっと尚史も同じだと思う。

尚史はどうだかわからないけれど、私は世間のリア充カップルがどんな風に過ごしているのかなんてよく知らない。

漫画の中のカップルは、最初のデートからいとも簡単に手を繋いだりキスしたりしているけれど、現実でもそんな感じなんだろうか。

もちろん私と尚史は仮想カップルだから、手ぐらいは繋いだとしても、本物の恋人同士みたいなことはしない。

しかし尚史と手を繋いだのなんて、きっと小学校に入学して間もない頃が最後じゃないか?

キヨは『尚史に慣らしてもらえ』と他人事のように言ったけれど、お互いに大人になった今、そんなことがシラフでできるのかと思ったりする。

尚史と難なく手を繋げるようになればミッションクリアとなるのか、それとも最後のミッションはもっと別の場所にあるのか。

この作戦の最終目的地は一体どこなんだろう?

「なぁモモ、さっきの話だけど」

尚史は鞄の中からゲーム機を取り出しながら呟いた。

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