インスタント マリッジ～取り急ぎ結婚ということで～

自宅の前に着き、尚史はポケットを探って取り出した鍵を鍵穴に差し込んだ。

別々の家に帰っていたこれまでと違って、同じ場所に帰る関係になったのだと実感する。

「私も尚史が作ってくれたオムライスなら、焦げてようが潰れてようが食べるよ」

「いや、そんなものをモモに食わせるわけにはいかないから！モモが腹でも壊したら大変だし、味見は俺がちゃんと食えるもの作れるようになってから頼む」

「ふふ……優しいなぁ、尚史は……」

玄関に入ってドアが閉まると同時に、私は尚史を後ろから思いきり抱きしめた。

尚史は私の不意打ちに驚き、「うわっ」と小さく叫んだ。

「モモ、どうした？」

「んー……尚史のそういう優しいとこ、すごく好きだなって。でも他の女の子にも優しくし過ぎて勘違いさせちゃったら困るなぁ……」

私がそう言うと、尚史は私の両腕をほどいてこちらを向き、そっと頭を引き寄せて唇に軽く口付けた。

「俺はモモにだけめちゃくちゃ優しくしたいんだけど」

「私にだけ？」

「そう、モモにだけ。俺はモモが一番大事だから」

「うん……知ってる」

私からキスをすると、尚史は嬉しそうに笑って私をギュッと抱きしめた。