インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
その後は避妊していたとしても、避妊具を使った避妊が100%じゃないことくらい、私だって知っている。

事なきを得たから良かったものの、もし避妊に失敗して水野さんが尚史の子を身籠っていたとしたら、尚史は責任を取って水野さんと結婚していたと思う。

そう考えるとやっぱり胸がモヤモヤして、無性に腹が立った。

黙ったまま改札を通り抜けてホームに向かっていると、すぐ後ろを歩いていた尚史が困り果てた顔をして私の様子を窺っていることに気が付いた。

「モモ……怒ってる?」

「別に。怒ってるって言うか、ムカついてる」

「ごめん……」

尚史は心底申し訳なさそうに謝る。

水野さんとの間にあったことを聞いた上で『過去のことなんか気にしなくていい』と言ったのは私なのに、一方的に怒るのは大人げないかな。

私はなんとか冷静になろうと大きく深呼吸をした。

過去のことで腹を立ててもしかたがない。

過ぎてしまったことより、今とこれからの方が大事だ。

私たちが中高生くらいの子どもならまだしも、27歳にもなると誰にだって過去はあって当然なんだから、私ももう少し大人にならないと。

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